2019.07.06
軍服に必ずといっていいほど描かれている迷彩(カモフラ)は、今では一般のファッションにも取り入れられるようになり、ミリタリーを知らない人にもすっかりお馴染みになっています。
ここでは、多くの人を引きつける迷彩の魅力を、その歴史や種類とともに解説いきます。
今でこそ、ミリタリーにおいて世界標準のようになっている迷彩ですが、軍服の歴史の中で迷彩が生まれたのはかなり最近の出来事なのです。
最近といっても第二次大戦前なのですが、古代から続く人類と軍装の関係のなかでは、その歴史はまだ浅いものです。
迷彩柄が初めて軍で使われたのは今からちょうど90年前のこと。
1929年にイタリア軍で迷彩柄が小型テントの模様として採用されました。
このテントはポンチョにもなっていて、雨天時には簡易雨具としても使えるものでした。
これは、軍服にカモフラ柄を描くことで戦場で目立ちにくくするという考え方のもととなったものですが、だからといって迷彩がすぐにスタンダードになったわけではありません。
今も昔も軍隊という組織は保守的なもので、特に伝統あるヨーロッパでは上層部が、自国の兵士にこんな珍妙なものを着せて戦わせることに大きな抵抗感をもっていました。
そんな時、迷彩を兵士の制服として初めて採用したのが、ナチス・ドイツの武装親衛隊です。
親衛隊は独裁者ヒトラーの私兵集団でしたが、軍から独立した組織であったため、新しいものを採り入れやすい気風がありました。
ドイツでは、迷彩によるカモフラージュ研究を重ね、1944年3月、ついに世界で初めての迷彩戦闘服を採用しました。
他の国でも一部で軍服に採用しているところもありましたが、この時代に戦闘服として大規模に使用したのはドイツだけです。
しかも、ドイツの迷彩は現代の軍隊で使われている迷彩にも通じる非常に先進的なものでした。
戦後、ドイツによる研究データを没収した連合国では、独自の迷彩服を生み出しますが、そのほとんどがドイツのものと似通った迷彩パターンだったのはその証拠といえます。
親衛隊の迷彩は、ヨーロッパの植生に溶け込むことを目的として、グリーンとダークグリーン、ブラウンが使われていました。
絵筆を使ってフリーハンドで描いたようなカモフラ柄特有の模様も今とほぼ変わりません。
ヨーロッパで戦っていた英米軍の兵士たちもドイツ軍から手に入れたものを使うことがあったほどです。
敵の軍服など着ていたら、誤って味方から撃たれてしまう危険性もありましたが、それほどこの迷彩服が有効なものだったということです。
ここからは迷彩にどのような種類があるのかをみていきましょう。
迷彩の目的は敵の目を欺くことにあり、その目的さえ果たせれば、必ずカモフラ柄がなければいけないということはありません。
単色迷彩は、その名の通り色を一色しか使わないシンプルな迷彩です。
軍隊の制服はだいたいダークグリーンなどの地味な色をしていますが、なるべく目立たず、周囲の森などに溶け込むためのもので、これだけでも派手な色を纏うよりはカモフラージュ効果があります。
ロシアなど北の国であたり一面雪景色という戦場は、白のシーツなどを被るだけでも十分迷彩としての効果を発揮でき、周囲の色彩が比較的単調な場所では、単色迷彩が有効に働く場合もあるのです。
これに対して分割迷彩は迷彩柄を2~4種類の色で塗り分け、不規則な模様を描くものです。分割迷彩は、周囲の景色に溶け込むだけでなく、その輪郭線をあいまいにして遠くから人だということを認識しにくくなる効果も狙っていて、こちらのほうがより高いカモフラージュ効果を期待できます。
ブラシ型迷彩は、ハケを使って絵具を塗りたくったようなカモフラのパターン(柄)です。
ブラシ型迷彩は、イギリス空挺部隊の制服である「デニソン空挺スモック」に使われていた迷彩パターンがもとになっているもので、イギリス連邦やその影響を受けた国の軍隊で多く採用されました。
ベトナム戦争中にアメリカ軍の特殊部隊が着用したことで有名なタイガーストライプ迷彩もブラシ型迷彩の流れを汲むものです。
まるで雲のような曲線で構成されたカモフラ柄で、イタリアの迷彩テントに使われたのがこのパターンでした。
1980年代からアメリカ軍の戦闘服として長らく使われたM81BDU(Battledress Uniform)のウッドランド迷彩などが有名です。
そのため、1990年代まで使われていた自衛隊の旧型迷彩服や台湾軍、韓国軍などアメリカの影響の強い国々で採用が相次ぎました。
楕円形のドットを不規則に配置したカモフラ柄で、ドイツ親衛隊がこれに近い迷彩を使用していていました。
戦後にドイツ軍で採用されたのをはじめ、現在の自衛隊の戦闘服など採用されています。
デジタル迷彩は斑点型迷彩の進化形と呼べる、最新の迷彩パターンです。
それまで迷彩のドットは手書きに近いものが描かれていたのに対して、コンピュータ処理によるデジタルピクセルのドットを使用しています。
まるで、モザイク画面のような独特なカモフラ柄です。
デジタル迷彩は見ている人間の視点をぼかして兵士を周囲に溶け込ませるだけでなく、ピクセルによるグラデーションを作り出すことによって見る角度によって色の見え方も変わってくるため、さらに高い迷彩効果が期待できるとされます。
ロシア軍や中国軍で採用され、アメリカ陸軍でも2004年に採用されましたが、アフガンなどで現場からあまり役に立たないという声が上がったため、2010年からは再び従来のアナログ迷彩に戻っています。
最新だからといってどのような場面でも有効とは限らないようです。
その他、迷彩のバリエーションは実に豊富でこれまでに紹介したパターンに当てはまらないものもたくさんあります。
特に現代では、軍だけでなく民間企業も様々な迷彩を開発していて、サバイバルゲームやハンティング用として販売されています。
アメリカのタクティカルブランド、クリプテック社が生み出す迷彩は、ヘビのウロコのような模様が特徴的で、サバイバルゲーマーにも人気です。
また、ニュージーランドのハンティングメーカーであるデソルブ社が開発したカモフラ柄は、動物の目の見え方を研究し、動物からの見えなくさを狙ったもので、まさにハンターのために作られた迷彩です。
冒頭にも書いた通り、ミリタリーの歴史のなかで迷彩の歴史というのはそれほど長いものではありません。
だからこそ、迷彩は現在進行形で進化し続けているといえます。
軍隊の制服では同じものが何年も使われるのと比べ、民間企業は毎年多種多様な迷彩服を発売していて、現代の迷彩のトレンドは軍隊ではなくこちらにあるといえそうです。
誕生以来、次々に新しいものが生み出され、これからなにが生まれてくるかわからない。
それこそが迷彩が多くの人を魅了する理由ではないでしょうか。
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